制作意図
曖昧な記憶
形の無い形の中で、脱退という立ち位置を選んだ菅野です。あれから2年あまり経つのでしょうか。時間が流れるのは早い。その間にも、いろいろなことが起きている今ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
バンドTILITILIは、今は活動をしていないですがこのコロナ禍、withコロナ、アフターコロナと言われる今、音楽も限られた活動を余儀なくされる中で、自分の中で何かできることはないかと考えていました。そんな折、音源を作ってお金を生みたい。そう思ったのは今年の2月。でも私uncle WOLKのチカラでは微々たるもので、リアルに少しでもコロナ禍に苦しむ状況に形を残したいと思ったのが今回のTILITILIでの音源発表という形でした。
TILITILIというバンドのチカラを借りたいと思ったのが素直な気持ちです。メンバー達に了承を得てから制作に入りました。曲のイメージは、完全にコロナ禍という生活です。それと、今まで当たり前だったことの曖昧な記憶。会えない、触れられないという中で、我々も一度もセッションする事なく、それぞれの創造性で作ってもらいました。直しはひとつもありません。
脱退した、ということへのプライドは、今回は全く必要としてないと思っています。我々は「仕事」として音楽制作をしていない身。そこのプライドより今は、久しぶりに連絡を取って、良い音楽を創造する事の価値の方が格段に意味があると思ったのです。その音楽がひとつの形になり、チャリティーとして何かの役に立つのなら、こんな音楽人冥利に尽きる事は無いと思っています。
現実的に考えても今はバンド活動そのものが難しい中で、リモートというスタイルで音楽を作れる術は、とても魅力的な事だと思います。そんな中でやはりTILITILIの世界を一曲で惜しみなく表現できたのではないかと思います。是非聴いて頂きたい。音楽にできること。会わなくてもできること。音楽を好きでいれば、たまにこうやってサウンドや表現に興奮できる事を忘れてはいけないと思います。今回はそれを体現できました。
「曖昧な記憶」の中に、今直面した初めての出来事にさえ為せるべきことが過去から学んでいる事を、楽曲を通して体感していただけたらと思います。
今回は、CDを手に取った方だけがフルコーラスで聴ける形を取らせてもらった事、どうかご了承下さい。その手にしてくれた行動が、誰かの何かの役に立つこそが、今の僕らにできる、音楽の力だと思っています。
菅野安宣